榎木孝明の近況や日々感じた事柄を文章にして、毎月更新しています。
榎木孝明

2024年4月1日 人生悲喜交々

 4月は入学や入社の新たな門出の季節でおめでたい反面、最近お亡くなりになる方が自分の周りで増えました。自分の加齢とともに人生の終盤に差し掛かる知り合いが増えるので、当然のことかもしれません。そして最近は、そのセレモニーが簡素化されてきたように感じます。

 コロナ禍の影響で人との接触が制限されたこともあり、亡くなった方とのお別れもままならない時代になりました。以前は知り合いの訃報が届くと、喪服に身を包みお別れに伺いましたが、最近は身内で葬儀を済ませてから、お知らせが届くことが多くなりました。葬儀の仕方も多様化してきて、死生観そのものが変化する時代でもあるようです。

 こんな時代に新しい職業が増えるのも特徴的です。退社届けの代行をする会社もその一つです。特に春に入社したての新社会人の退社率が高いのは例年のことのようで、ついにそれを代行する会社が登場したと言うわけです。会社を辞めたいと自分で言えば済むことを、お金を払ってまで代行してもらうのも現代人の特徴でしょう。それをコミュニケーション能力の低下と言いたいところですが、ネット世代は人付き合いも代行が好みなようです。

 以前によく読んでいた星新一さんのブラックユーモアの小説の世界を思い出します。その小説の中では、バーチャルリアリティーで世界旅行をして、そのお土産はネットで注文すれば世界中から届くと言う…。ふと気づくと、それは私たちの身近な現実になっていたと言うわけです。その小説には続きがあって、“幸せ探し“のボタンを押すと次々とバラエティーに富んだ楽しそうな人生プログラムが出て来ました。その裏では感情を持ったAIが、人間の人生を弄ぶゲームをしていました。そんな幸せ代行の会社にお金を払う現実に、疑問を感じる自分は時代遅れなのかもしれませんが。

榎木孝明

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